研究内容/Research

メダカの生態について

水槽実験

オスが状況に応じて1回の配偶あたりの射精量を調節する繁殖戦略は「精子配分戦略」(Sperm allocation)と呼ばれます。ミナミメダカをモデルに体外受精種である魚類の精子配分戦略について行動生態学的な視点から研究をしています。今後は、モデル生物であるメダカの利点を活かした生理学や遺伝学的な手法を取り入れたアプローチやメダカ以外の魚種を使った精子配分戦略の検証実験を進めることで、「有限な精子」という制約がもたらす生物の生き様を知りたいと考えています。

野外調査

生物の野生での生態、特に生活史の中でも重要な繁殖生態の解明は、学術的および保全の観点から重要な課題です。野生での生態学的知見の不足は、実験室で観察した生命現象の誤解釈や保全活動の誤った提言を招くリスクがあります。メダカは、かつて日本に広く分布していました。しかし、1999年には絶滅危惧Ⅱ類に指定され、現在は全国各地で保全活動が行われています。メダカは、世界中の実験室で研究されていますが、野生での生態学的知見は極めて限られています。このため、室内で観察した生命現象が実際の野生での生態をどれほど反映しているかは、慎重に検討する必要があるのではないかと考えています。2023年度からメダカの繁殖期の特定および繁殖行動の解明を目的とした野外調査を開始しています。

共生関係の生態調査

エビ-ハゼの共生は、単純な「見張りー巣穴の提供」だけでなく、ハゼは自身の糞をエビに、エビは溝掘りによってベントス(底生生物)をハゼに、両者が相互に給餌し合う(相互給餌仮説)という別の側面があることを動物社会学研究室が世界に先駆けて明らかにしました。僕は潜水できませんが、現地でヤビーポンプや調査の補助をしたり、統計解析などをお手伝いしています。

クマノミが自身の宿主であるイソギンチャクに給餌するという、これまであまり議論されてこなかった行動に着目し、給餌がイソギンチャクの成長に寄与していることを検討しているます。また、クマノミは一般的に一夫一妻の魚とされていますが、実は一夫多妻や一妻多夫といった別の婚姻形態も報告されています。このような婚姻形態の違いがどのように生じるのかも注目しています。こちらも、統計解析などをお手伝いしています。

屋久島での調査

 

NPO法人屋久島いきもの調査隊が主催するヤクザル調査の主要メンバーとして、2012年から2022年までの野外調査に参加しました。今、僕が研究を続けていいるのは、この経験が大きく影響しているます。この調査は、屋久島の生物多様性の学術研究とその成果の普及を目的としており、僕がお手伝いした内容は、2本の論文になっています。1本目は、ヒルの体内に残っている動物の血液中のDNAから、ヒルがどんな生きものを吸血しているか明らかにし、カメラトラップによって明らかにした島に生息する哺乳類の種の構成結果と比較しました。2本目は、2000-2019年までの20年間のデータから原生林や天然更新林、植林地の時間的変化がニホンザルに及ぼす影響を明らかにし、保全策を提案しました。

収蔵庫の整理・生物相調査

岐阜県美濃加茂市民ミュージアムでの適切な標本保管体制の構築のお手伝いをしました。具体的には、館内に保管されていた標本の現状を確認し、未登録の液浸標本を整理、魚類の収蔵標本の目録を作成しました。また、収蔵標本と現在の河川の魚類相との比較を目的とした美濃加茂市周辺の河川での魚類相調査も実施しました。これらの成果は、博物館の紀要にまとめ、特別展を通じて市民に一般公開しました。

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