野外調査 / Field

FIELDWORK

野外調査

岐阜県の小川で、深夜から夜明けまでメダカを観察しています。

CONTENTS

WHY FIELD

MOTIVATION

なぜ野外調査をやるか

メダカは、世界中の実験室で研究されている代表的なモデル生物です。それでいて、野生のメダカが実際にどんな生き方をしているか——いつ・どこで・どんな相手と繁殖しているのか——という基本的な情報は、驚くほど限られていました。

実験室で観察された現象が、野生でも本当に成立しているのか。実験室の条件が、自然のメダカの姿をどこまで歪めているのか。これを地道に確かめるために、岐阜の小川で深夜のメダカを観察しています。

「メダカは朝に産卵する」という長年の通説が、実は実験室の人工照明に依存していて、野生では深夜 0 時頃から始まっていた——という発見は、まさにこの往復から生まれました。

野外調査の様子

THE SITE

FIELD SITE

調査地の概要

場所:岐阜県の小川

環境:水深 30 cm 程度の浅い水路。両岸に植生があり、流れは緩やか。日中はメダカの群れが浅瀬で観察される、典型的な里山環境。

対象生物:野生のミナミメダカ(Oryzias latipes)。1999 年に絶滅危惧 II 類に指定されており、調査では個体への侵襲を最小限に抑える観察ベースの手法を採用しています。

※ 保全の観点から、具体的な調査地点(市町村レベル以下の地理情報)は公開していません。メダカの分布は脆弱で、ポーチング(密漁・無断採集)のリスクを避けるためご理解ください。

ANNUAL CYCLE

SEASONAL CALENDAR

季節カレンダー

年間を通じた野外調査と関連作業のスケジュールです。

  • 4-6 月:調査地選定・撮影手法の改良。実験室では並行してオスの配偶者選択・音・尿関連の水槽実験。
  • 7-8 月:野外動画撮影の本番。梅雨明け〜 7 月末がベスト撮影期。深夜から夜明けまで連続でカメラを設置。
  • 9-10 月:野外データの解析開始。並行して水槽実験(個体識別・群れ形成・精子の速度×量関連)。
  • 11-3 月:論文執筆・科研費等の助成金準備・学会発表(動物行動学会・魚類学会・生態学会など)。

METHODS

FIELD METHODS

調査手法

「実験室と野外をつなぐ」ために、複数の手法を組み合わせています。

24 時間連続のビデオ観察

赤外線カメラで日没から夜明けまでメダカの繁殖行動を撮影します。深夜の暗い時間帯にこそ繁殖が始まることを発見した、本研究の中核となる手法です。同じプロトコルを野外の小川・半野外の屋外水槽・実験室の 3 環境で適用することで、環境間の差を切り分けています。

卵母細胞ステージ分析

メスの卵巣を顕微鏡で観察し、卵母細胞のステージから直近の排卵時刻を推定する手法です。1 時間ごとに 144 匹のメスを解剖して比較した結果、野外環境では実験室より約 3.5 時間早く排卵が起こることを示しました。

長期モニタリング

繁殖期(春〜夏)を通じて、繁殖タイミング・産卵頻度・活動パターンを継続的に記録します。1 日単位の変動だけでなく、季節を通じた変化も追えるようにしています。

FINDINGS

KEY DISCOVERIES

これまでの主な発見

野外調査から見えてきた、メダカの「リアルな姿」の主な発見です。

  • 野生メダカは深夜に産卵を開始(2025, PLOS ONE):岐阜の小川での観察から、産卵は午前 0 時頃から確認、活動量と求愛は午前 1〜3 時にピーク。
  • 半野外水槽でも午前 1 時から繁殖開始(2025, Scientific Reports):屋外水槽 31 ペアの 24 時間赤外線撮影で、午前 2〜4 時がピーク。
  • 実験室と野外で繁殖時刻が 3〜4 時間ずれる(2025, Scientific Reports):同一系統のメダカでも、環境の違いで繁殖タイミングが大きく変わる。
  • 排卵タイミングも環境で 3.5 時間ずれる(2026, Royal Society Open Science):144 匹のメスを比較、野外の自然光下では実験室の人工照明環境より早く排卵。

詳しい研究内容と論文・プレスリリースは、研究内容ページとトップページをご覧ください。

研究内容ページへ › トップページへ ›

EQUIPMENT

GEAR

装備・機材

野外調査で使用している主な機材の種類です。

  • 赤外線カメラ:深夜の暗い水中を撮影。可視光を当てるとメダカが警戒するため、赤外線で人為的影響を抑える。
  • 水中・水上ビデオカメラ:水面上と水中の両アングルから撮影し、求愛・産卵行動を立体的に記録。
  • 長時間バッテリー・ソーラーパネル:夜間連続撮影のための電源を確保。野外では電源が取れないため、バッテリー駆動を前提に組む。
  • 水温・水流ロガー:撮影と同時に物理環境を記録し、行動との対応を解析できるようにする。
  • 顕微鏡セット(現地用):卵母細胞ステージ分析のため、メスを 1 時間ごとに解剖・観察する際に使用。
  • 個体識別タグ・ノギス・電子秤:体長・体重などの基本データを取得。

※ 具体的な機材の型番・メーカーは、共同研究や手法の相談の中でお伝えしています。

GET IN TOUCH

CONTACT

野外調査の共同研究・取材

野外調査の共同研究・取材・見学のご相談はお気軽にどうぞ。野外シーズン(7〜8 月)は岐阜滞在が長期化するため、対面相談もアレンジ可能です。

連絡先ページへ ›

タイトルとURLをコピーしました